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鉄絵蒲公英文茶碗

鉄絵蒲公英文茶碗

重要文化財 / 佐賀県重要文化財

鉄絵蒲公英文茶碗

生産地
肥前
制作年代
1590~1610年代
備考

 令和7年(2025)5月2日指定

 本作品は、17 世紀初期頃に肥前で作られた、蒲公英(たんぽぽ)を描く唐津焼の沓茶碗ある。口縁を内向きにすぼめながら轆轤で円形に引いた後、楕円形に歪ませている。一般的な沓茶碗に比べ歪みの少ない形状は、沓茶碗の中でも比較的初期に作られた形状と考えられる。高台は円形に低く削り出して中心を丸く削り込んだ後、高台の外側と腰部に直線的なヘラ彫りを施している。絵唐津には珍しい蒲公英が簡素な表現ながらよく特徴を捉えて描かれ、口縁にたっぷり塗られた鉄顔料の流れは趣のある景色となっている。
 類品は、絵唐津を焼いた窯のなかでも早い時期に操業したと考えられている伊万里市内の焼山上窯跡の陶片にみられ、歪みや高台作り、ヘラ削りに相通じる特色が認められる。
 絵唐津のなかでも、類例の知られていない蒲公英の意匠を中心とする優品であることに加え、沓茶碗の中でも初期と考えられる形状であり、大名外交に茶陶が用いられるなかで重用された唐津焼の歴史背景を雄弁に物語っていることから、きわめて重要な作例である。