佐賀県立博物館|佐賀県立美術館

REPORT学芸員だより

県博クロニクル展・展示替え

2020年02月07日 

県博クロニクル・展示替えのおしらせ


博物館3号展示室で開催中のテーマ展「県博クロニクル」で展示替えをおこないます。展示室入口正面で展示中の、《源氏物語絵色紙帖》(国指定重要文化財・京都国立博物館蔵)に代わって、2月11日(火)より、以下のやきもの5点(すべて田中丸コレクション蔵)を展示します。

  • 唐津 奥高麗茶碗 銘「閑窓」
  • 高取 藁灰釉緑釉流四方耳付水指 銘「若葉雨」
  • 鍋島 色絵青海波地文萩紅葉図皿
  • 伊万里 色絵風俗図大壺
  • 柿右衛門 色絵藤文燭台

これらは、当博物館が50年前に開館したときの記念展「江戸桃山美術名作展」で展示したものです。

このうち、執筆者Yのイチオシは《色絵藤文燭台》。蝋燭を差す受け皿は五弁の花をかたどり、柱は藤花がしだれた様子を描いた竹筒形、唐草文をあしらった脚部を獅子の口が咥えているという、華やかかつエキゾチックな一点です。

こちらは由来が興味深く、筑前を治めた黒田家の第4代藩主・黒田綱政の墓所(福岡市・崇福寺)を、1950年に調査した際に出土したもの。綱政公の墓所は、石碑の立つ円墳の地下に、石室を設けて木棺を置き、その木棺なかに綱政公のご遺体をおさめた甕棺があるという構造でした。甕棺を開けてみると、なんと綱政公はミイラとなって保存されており、動く四肢、軟らかな筋肉を維持した状態で発見されたのだといいます。当の燭台は、綱政公をまつる祭壇のように、香炉と花立とともに木棺の前に並べられていました。

なお、石室のふたも甕棺のふたも固く閉ざされていて開けることが叶わず、結局ふたを破壊して内部を取り出したということ。永遠に綱政公の姿を留めおこうとした思いが感じられます。発掘調査で日の目を見ることがなければ、暗い石室のなかで、この燭台はまぼろしの灯りをともし続けたのでしょう。

本作は展覧会が終了する3月8日(日)まで展示の予定です。また、今週末で見納めの《源氏物語絵色紙帖》も、ぜひお見逃しなく!

参考:奥村武「福岡医学史物語」『福岡市医報』9(11)