常設展、一部作品の展示替え ~狩野山雪の作品、大集合~
現在、佐賀県立博物館の常設展示 2号展示室(博物館3階)にて、一部作品の展示替えをしております。
今回の展示替えでは、以下の作品を7月5日(日)まで展示いたします。
・狩野山雪筆《蝦蟇・鉄拐図》(館蔵)
・狩野山雪筆《蝦蟇・鉄拐・観音図》(個人蔵・寄託品)
・狩野山雪筆《龍虎図》(館蔵)
・副島種臣筆《耕田歌》(館蔵)
今回、当館で所蔵、またはご寄託いただいている狩野山雪の作品を一挙に紹介しています。
狩野山雪(1590~1651)は、肥前国(佐賀県・長崎県)に生まれ、江戸時代に活躍した絵師です。16歳より京都に移り、京狩野(きょうがのう、京都を拠点とした狩野派)の狩野山楽(かのうさんらく)の弟子となり、その後画技を認められ、娘婿として京狩野を相続します。京都市右京区の妙心寺天球院にあったとされる「老梅図襖」(メトロポリタン美術館蔵)など、様々な寺社や城の襖絵(ふすまえ)制作を手がけました。
展示作品中の内、2点は、中国の故事に登場する仙人、蝦蟇仙人(がませんにん)と鉄拐仙人(てっかいせんにん)が描かれています。
この両仙人は、日本で多く描かれた画題です。特徴として蝦蟇仙人は3足の白い蝦蟇(がま、ヒキガエル)がともに、鉄拐仙人は杖を携えて描かれます。
狩野山雪筆《蝦蟇・鉄拐図》(館蔵)部分
この図の蝦蟇仙人は銭を結んだ糸を引っ張り、蝦蟇と戯れています。鉄拐仙人の方は、以下のような伝説の場面が描かれています。
鉄拐仙人が従者に「7日して帰らなければ、この肉体を焼け」と言い残し、自らの魂を吹き出して、老子(中国春秋時代の哲学者で道教の始祖)のもとに出かけました。しかし、自分の母の危篤の知らせを聞いた従者が6日目で燃やして母のもとに帰ってしまい、7日目に戻ってきた鉄拐は肉体が無くなってしまったため、餓死した別の男の屍に入って蘇ったとのことです。画中には、画面の左端へ、鉄拐の口から魂が出ている様子が描かれています。
狩野山雪筆《蝦蟇・鉄拐図》(個人蔵・寄託)部分
もう一方の《蝦蟇・鉄拐・観音図》(個人蔵・寄託品)は、杖の上に乗った鉄拐仙人や、蝦蟇を掌に乗せる蝦蟇仙人が描かれ、山雪は同じ画題の中でも、異なる人物ポーズや背景など描きわけていることが分かります。また、風に揺れる衣や、極細の髪、水面の揺れている描写など、山雪の魅力は巧みな水墨表現にもあります。
是非、会場に足をお運びいただき、作品をご覧ください。
(文責:学芸課 安東慶子)