佐賀県立博物館|佐賀県立美術館

REPORT学芸員だより

さがヲほる―佐賀県発掘成果速報2020― 担当者のオススメ展示品!

2020年08月04日 

 6月16日より、博物館第3展示室にて「さがヲほる―佐賀県発掘成果速報2020―」を開催しています。今回で5回目となる本速報展では、佐賀県内各地で行われている発掘調査の中から出土した調査員オススメの逸品や最新の調査成果などを展示しています。

 今回の展示品の中で担当者が特にお気に入りの資料をご紹介します。今回オススメしたいのは佐賀市大和町の高畠古墳の石室から出土した副葬品です。

2佐賀市高畠古墳出土 副葬品.jpg

 高畠古墳は、佐賀市大和町に流れる川上峡の東岸の丘陵部に位置する古墳で、大正11年(1922年)、土地の所有者が春蒔き大根を作るために畑の耕作する際に、かねてより畑の中にあった大きな盤状の石を取り除こうとしたとき、その下から古墳の石室のような石積が見つかったことから発見に至りました。
 当時佐賀警察署から巡査部長が駆け付け、盗難の恐れがあることから石室内の副葬品を保管しており、その後の昭和24年(1949年)に佐賀県教育委員会が出土品の調査を行って以来、70年近く再調査の機会がありませんでした。

 今回展示に際し、最新の研究成果に照らして再度検討を行うことになりました。

 高畠古墳は、古墳時代中期(A.D.400~500年)に築かれたと考えられる円墳で、男女の人骨が1体ずつ埋葬されていました。その傍らに供えられていた副葬品には刀・鏡・玉類やその他多くの鉄製品などがあります。

 中でも、この三叉鍬は過去の調査記録では「熊手」と表記され、「農工具か武器か他地の出土例も寡聞之を知らぬ」と記載されており、当時では他の出土事例がないためにどのようなものかわからなかったといいます。しかし、現在全国各地の事例を参照すると、国内でも6例ほどしか出土していない鉄製の鍬で、大変貴重なものであることがわかりました。

2佐賀市高畠古墳出土 三叉鍬 .jpg

 この三叉鍬は、朝鮮半島中南部、当時の伽耶で主に使用されていた農具であり、木製の棒の先に装着、田んぼなどの水気のある土地の耕作に利用されていたと考えられています。その形態から古墳と同様に古墳時代中期頃のものとみられ、朝鮮半島で製作されたものを高畠古墳の被葬者が入手したものと想定できます。
 さらにその他の鉄斧や銅鈴も、その形態や製法から朝鮮半島由来の製品である可能性が高いと考えられ、高畠古墳の被葬者はこのような貴重な品々を入手できるほどの地位の高い人物であったのか、興味が尽きません。

 佐賀県では毎年のように新たな発掘成果が見つかり、かつての佐賀の歴史像が少しずつ明らかになっています。そんな佐賀県の歴史の最先端の資料を展示している本速報展では、この他にもさまざまな時代の資料を展示しておりますので、ぜひ足をお運びいただき、ご自身の目で隅々までご覧ください。

(文責:文化課文化財保護室 土井翔平)