佐賀県立博物館|佐賀県立美術館

REPORT学芸員だより

コレクション展「肥前刀のいろは」好評開催中!刀剣展示の裏側をご紹介します

2020年09月10日 

7月13日(月)より美術館2号展示室にて、コレクション展「肥前刀のいろは」を開催しています。近年の刀剣ブームの後押しもあり、老若男女問わず多くの方々にご来場いただいています。会期も残すところあとわずかですが、今回は本展覧会の設営秘話、裏側をご紹介します。


会場設営 展示ケース.jpg
展示ケースの内側から。なかなか普段見ることの無い風景ですね。
このように、展示台や刀を仮置きして、ケース内を徐々に整えます。

展覧会設営の様子ー刀を展示する前のひと手間ー

 会場設営では、上の写真のように展示台を設置した状態で刀剣を配置します。その際、以下の手順を経る必要があります。
  1 刀を収めている鞘(さや)から刀身を出す
  2 刀身保護のために塗っている丁子油(ちょうじあぶら)を、専用の布で拭いて落とす
  3 打ち粉(砥石の粉)を刀身に当てて磨き、刃文を浮き立たせる
 これらの過程を経て、ようやく刀を展示ケース内に配置することができるのです。


IMG-0797_14865_marked.jpg表示

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打ち粉を刀身に当てる様子。粒の粒子はPM2.5よりも細かいのだそう!

打ち粉あて2.jpg
打ち粉をまぶしたら、今度は専用の布で拭lって磨き上げます。
丹念に磨くことで、刃文や地鉄(じがね)の模様が浮かび上がってくるのです。

打ち粉あて3.jpg磨き終えたら、刀を照明に当てて、隅々まで念入りにチェックします。
厳しいチェックをクリアすることで、ようやく刀を展示ケースに入れることができます。

照明を調整する(ライティング)

 全ての展示資料をケース内に入れ終えたら、仕上げのライティング調整作業に入ります。金属という性質上、刀は光を反射しやすく、少し間違えるとせっかくの展示が台無しになってしまいます。刃文を綺麗に見せるためには、ケース内の明るさをできるだけ抑えて、適切な角度からスポットライトを当てるといった繊細な調整作業が必要になるのです。

照度調節前の刃文.jpg
展示ケース内の明るさを最大にすると、反射によって刃文がほとんど見られませんが...

IMG-0791_15077_marked.jpg明るさを抑えると、刃文がはっきりと浮かび上がってきました!
全ての照明を調整し終わって、ついに展覧会が完成します!

後日談ー会期中の手入れについてー

 さて、今回の展覧会は2か月もの長期にわたって肥前刀が展示されていました。しかし、刀はほんの少しの温度変化にも敏感で、手入れを怠るとすぐに劣化してしまうほど繊細です。
 そこで、常に万全のコンディションに整えた肥前刀を鑑賞していただくために、2週間に1度、展示している刀を一斉に手入れしています。刀の手入れは、学芸員と当館の非常勤職員(刀剣専門の研ぎ師)の2名で実施します。休館日の月曜日に1~2時間ほどかけて、19振の刀全てを展示ケースから一度出し、再び磨き上げます。このように、刀剣展示は会期が始まってからも

 いつご覧いただいても美しい肥前刀。展覧会はもうすぐ終わりますが、9月18日(金)から開催される50周年特別展の後、11月より常設展での刀剣展示を再開します。常時3~4振の刀を定期的に入れ替えながら展示するので、いつお越しいただいても異なる肥前刀をご覧いただけます。「ここに来れば肥前刀に会える」そのような気持ちでお気軽に足をお運びください。

文責:学芸課 阿部大地