佐賀県立博物館|佐賀県立美術館

REPORT学芸員だより

【THIS IS SAGA~奈良時代編~】やっぱり国宝はすごい!!―国宝『肥前国風土記』の展示は18日(日)まで―

2020年10月14日 展覧会

現在開催中の博物館50周年特別展「THIS IS SAGA」をより楽しく見ていただくために、ミュージアム・ダイアリーにて、旧石器・縄文時代から明治時代の展示内容について各時代の担当学芸員が紹介。
今回は、奈良時代の展示内容からご紹介します。

やっぱり国宝はすごい!!―国宝『肥前国風土記』の展示は18日(日)まで―

今回の展示資料のなかで唯一の「国宝」『肥前国風土記』(個人蔵、香川県立ミュージアム寄託)の展示は、いよいよ18日(日)で終了します。国宝『肥前国風土記』は、平安時代末期の写本とされる貴重な文化財であり、劣化防止のため年間公開日数が30日以内に制限されているためです。

国宝『肥前国風土記』展示風景.jpg

『古事記』、『日本書紀』とともに、奈良時代に編纂された書籍として日本史教科書に載る『風土記』は、国が諸国に命じて地名の由来や産物、伝承などを記録、提出させたものです。
『風土記』の原本は残されておらず、写本が現存するのは当時60ヶ国以上の内、肥前(佐賀県・長崎県)のほか豊後(大分県)・出雲(島根県)・播磨(兵庫県)・常陸(茨城県)の5ヶ国だけで、肥前と播磨が最も古い平安時代の写本で国宝に指定、豊後は鎌倉時代の写本で重要文化財であり、現存する『風土記』写本のなかで、国宝『肥前国風土記』の評価の高さがわかります。
(※国〈文化庁〉は、有形の文化財で「重要なもの」を重要文化財に指定し、そのなかでも「特に価値の高いもの」を国宝に指定。)

国宝『肥前国風土記』は、佐賀県のもとになった「肥前国」に関する最古の記録です。表紙は縦23.7センチメートル、横15.9センチメートル。ページを開いた状態でもA4判程度の大きさで、すべて漢字で書かれた、決して目立つ展示品ではありませんが、奥書には「校合了」と記され、もとになる本との照合が行われた、確かな内容の写本であることがうかがわれます。
冒頭、「肥前の国は、もとは肥後の国と合わせて一つの国でした」と記述され、肥前国の成立は奈良時代の少し前、7世紀の終わりころであり、佐賀の地名の由来の一つ、楠(くすのき)の樹が栄えていたので「さか」、「さが」となったことや、有名な松浦佐用姫の伝説も記されおり、奈良時代の肥前を知ることができるのです。

また、書写した人物は不明ですが技量は高く、一頁8行、一行18字に統一された筆跡は、終始安定した整然たる運筆であり、一人の手による書写のように見えます。文字には太い線と細い線が入り混じりながらも端正で気品が感じられ、大変美麗である点も見どころです。ガラス越しですが、貴重な国宝を間近に見ることができる絶好の機会であり、18日(日)までのご観覧がおすすめです。
なお、20日(火)からは、『肥前国風土記』の写本のなかで二番目に古い、1700(元禄13)年の写本、東京大学附属図書館所蔵本を展示します。

さらに、本展「THIS IS SAGA」の図録には、この『肥前国風土記』全ページの写真、および現代語訳も掲載しています!展覧会場でご紹介していない部分の内容も、じっくりお読みいただける貴重な資料となっております。(1冊1,500円)
遠方の方には、郵送での販売も承っていますので、お問い合わせください。(頒布方法についての詳細は「図録・グッズ」のページをご覧ください。別途送料がかかります)。

大変貴重な文化財、ぜひ展示室で実物をご覧ください。

(文責:当館学芸員 福井尚寿)