佐賀県立博物館|佐賀県立美術館

REPORT学芸員だより

【THIS IS SAGA~平安時代編~】藤原道長が日記に書いた神崎荘

2020年10月26日 展覧会

現在開催中の博物館50周年特別展「THIS IS SAGA」をより楽しく見ていただくために、ミュージアム・ダイアリーにて、旧石器・縄文時代から明治時代の展示内容について各時代の担当学芸員が紹介。
今回は、平安時代の展示内容からご紹介します。

藤原道長が日記に書いた神崎荘(かんざきのしょう)

 佐賀県立博物館50周年特別展「THIS IS SAGA」、今回は平安時代の見どころをご紹介します。

 平安時代、佐賀平野はすでに九州の中でも有数の穀倉地帯だと知られていました。現在の佐賀県東部に、天皇直轄領である神崎荘(かんざきのしょう)が誕生します。
 なぜ、この神崎荘が「天皇直轄領」であると言えるのでしょうか。その証拠となるのが、本展覧会の平安時代コーナーで最初に展示している『御堂関白記(みどうかんぱくき)』(陽明文庫蔵)という日記に記されています。
 『御堂関白記』は、平安時代の貴族・藤原道長(ふじわらのみちなが)の日記です。藤原道長といえば、歴史の授業で一度は耳にしたことがあるかと思います。道長は長期にわたって日記をしたためており、本資料は言うまでも無く、古代日本史研究においてもたいへん重要な基礎資料です。今回出品しているのは江戸時代の写本ですが、原本は国宝に指定されています。
 この『御堂関白記』の長和4年7月15日条に、「神崎御庄」という記述が残されています。道長は当時、貴族のなかでも一際大きな権力を有していました。その道長が神崎荘に「御」の字を付すということは、道長よりも更に上の位の人物の所有地である、ということで、この地が天皇直轄領であったことがわかるのです。

御堂関白記.jpg  ちなみに、本展覧会で展示している文書資料の多くは、見どころとなる箇所がどこなのかわかるように壁面グラフィックで示しています。文書資料は、せっかく展示していても、書かれている文字がよくわからず、実物をじっくり見ることができなかったりすることも多いと思います。解説している箇所が展示資料の具体的にどこにあたるのかがわかれば、存分に展覧会のストーリーを味わうことができるはずです。

 さて、平安時代コーナーでは、『御堂関白記』以外にもたくさんの資料を展示しています。たとえば『御堂関白記』の隣に展示してある『水日記(すいじつき)』では、平忠盛(たいらのただもり、平清盛の父)が神崎荘で日宋貿易をさせていたことを示す箇所を紹介しています。九州における日宋貿易の舞台といえば博多が有名ですが、有明海でも活発な交易があったのです。宋銭や磁器といった出土品から、鏡といった伝来品に至るまで、平安時代の佐賀と世界を結ぶ様々な資料をご紹介しています。ご来館いただいた皆様には、滅多に見ることのできない貴重な品々を、心ゆくまでご堪能いただければ幸いです。

(文責:阿部大地)