画家たちが愛した花-岡田三郎助アトリエの庭に「アカンサス」が咲きました。
2021年06月01日
「...(岡田先生のアトリエの庭の)小さな池には睡蓮が、その傍には真紅の紅蜀葵の列、バラや夾竹桃の奥にはアカンサスの大きな葉の群れの植込があった...」
古沢岩美「赤切符」(『絵の放浪』所収 文化出版局 昭和54年)
県立博物館から、お花の話題をもうひとつ。
今、岡田三郎助アトリエの庭では、ガクアジサイなどの色鮮やかな花々に混じって、ひっそりと、そして上品に咲く薄桃色の花があります。
その名前はアカンサス。アトリエを東京から佐賀に移築する際、庭に残されていたものを分けていただきました。このアカンサスは岡田先生の時代からずっとアトリエの庭にあって、訪れる人たちの目を楽しませてくれています。今持って青々とした葉を繁らせ、美しい花を咲かせるその強い生命力に感動します。
このアカンサスの特徴ある花と葉は、古くから絵の額縁のデザインに用いられています。岡田先生の傑作《婦人半身像》(昭和11年、東京国立近代美術館蔵)そして《裸婦》(昭和10年、佐賀県立美術館蔵)の額縁のデザインにも、アカンサスの葉と花があしらわれています。
アカンサスは画家にとって、そして美術にとって、「美」と「生命」の象徴のような植物であったのかもしれません。
(文責:野中耕介)