特別展「白馬、翔びたつ」記念講演会を開催しました!
現在、美術館で開催中の特別展「白馬、翔びたつ ―黒田清輝と岡田三郎助―」には、連日多くのお客様に足をお運びいただいています。
本展の関連イベントとして、9月26日(日)に、記念講演会を開催しました。今回はその模様をお伝えします。
前週の18日(土)に予定されていた講演会でしたが、台風の影響を受けて、急きょ一週間の順延となりました。
そのような中にも関わらず、当日は約120名という大変多くのお客様にお越しいただきました。
今回の記念講演会の講師としてご登壇いただいたのは、今年春に千葉市美術館長に就任された、山梨絵美子さんです。
山梨さんは、長年にわたり東京文化財研究所で近現代美術の研究に携わり、黒田清輝や高橋由一をはじめとした日本近代洋画分野で大きな地歩を築き、活躍を続けてこられた方です。
今回の講演では、1896(明治29)年に黒田清輝が岡田三郎助ら若手洋画家たちと共に興した洋画グループ、「白馬会」の活動と社会的な意義に焦点をあて、「白馬会―美術で社会を変える試み」というテーマでご講演をいただきました。
1893(明治26)年にパリ留学に終止符を打ち、帰国した黒田清輝や久米桂一郎は、国内の閉鎖的な美術界の状況に不満を持ち、彼らが学んだフランスの美術界をまねて、これを刷新しようとしました。その運動の中心となったのが白馬会です。
現在の日本の美術教育制度の土台となっている、フランス式の美術制度や美術教育。明るく新鮮な印象派風の光や色彩の表現の仕方。いわゆる「構想画」と呼ばれる、大画面で造る正統的なアカデミズム絵画の様式。美術の世界に定着した、裸体(ヌード)表現の普及。さらにフランス式の芸術家の生活様式...。白馬会の画家たちは、明治の美術界に、実に多様な価値観や制度を持ち込みました。そしてその一部は現在も引き継がれ、社会に影響を与え続けているのです。
美術から社会へのつながりという、とても大きなテーマではありましたが、山梨さんの浩瀚な知識が発揮された素晴らしい講演会でした。
本展の展覧会場にも、黒田清輝、岡田三郎助のみならず、藤島武二や和田英作など、白馬会を代表する画家たちの作品が並んでいます。
彼らがどれだけの情熱を持って、当時の美術界を動かしていったかを考えるとき、作品もまた一味違った姿を私たちに見せてくるような気がします。
今週末の10月2日(土)には、関連イベントの第2弾として、シンポジウムの開催を予定しています。
こちらも、全国から日本近代洋画研究の第一人者である研究者の方々をお招きして、展覧会をより深くお楽しみいただけるような深い内容の議論を予定しています。
当日はシンポジウム参加者の方向けのお得な入場割引もありますので、ぜひ特別展と合わせてお楽しみください!
(文責:学芸課 秋山沙也子)