佐賀県立博物館|佐賀県立美術館

REPORT学芸員だより

福岡市美術館で開催中の特別展「国宝 鳥獣戯画と愛らしき日本の美術」にて 当館蔵の長澤蘆雪作品を展示しています!

2022年10月07日 その他

ただいま福岡市美術館では、特別展「国宝 鳥獣戯画と愛らしき日本の美術」を開催しています。
こちらの展覧会に当館所蔵の長沢蘆雪《唐獅子図屏風》を貸与し、現在同館で展示されています。

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「国宝 鳥獣戯画と愛らしき日本の美術」展は、京都の高山寺に所蔵される有名な作品、国宝《鳥獣戯画》(鳥獣人物画)について
"動物のモチーフ"と"表現の簡潔さやユーモア"といった作品を支える2つの要素を2大テーマにして《鳥獣戯画》だけでなく日本美術の魅力に迫る展覧会です。

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長沢蘆雪《唐獅子図屏風》佐賀県立博物館蔵

屏風の中央に、体を捻ってこちらを睨みつける1匹の唐獅子が描かれています。
唐獅子の姿勢は今まさにザっと飛び出して、その後、急に止まったかのように、やや前屈みで、前足を踏ん張っています。
唐獅子の輪郭線は勢いを抑えないまま描かれたか、かすれたり筆が割れたり、実に荒々しい筆遣いです。
口元の側には、よだれのように墨が垂れて、唐獅子の迫力を更に助長させています。
こちらの作品は鍋島家に伝来した作品で、昭和12年(1937)の恩賜京都博物館(京都国立博物館の前身)にて開催された
「蘆雪名畫選」に、鍋島家12代当主である鍋島直映氏の所蔵品として出品されています。

長澤蘆雪は、淀藩上杉家に生まれで京都に出て円山応挙のもとで絵を学び、24歳の時、安永7年(1778)にはすでに画法を身に付けていたことが知られています。
蘆雪は、師の応挙の写生的で穏やかな画風に収まらず、意表をつく構図と自由な筆致で応挙の門人の中でも異彩を放った画家です。
本作もまた、唐獅子の威圧感を大胆な筆運びで描いているところは、応挙の真に迫るような描写力とは全く異なる、蘆雪の個性が発揮された作品の1つといえるでしょう。

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会場では、平面に広げた別添の作品画像と違い、本来の屏風の折れがあるため、より臨場感のある見え方で御覧いただけます。

作品を通じて日本人が向けてきた動物への温かな眼差しを感じ、「愛らしい」たくさんの動物たちに触れてみてはいかがでしょうか。
展覧会期も残りわずかです!是非、福岡市美術館にて本作をお楽しみください。(安東)

展覧会情報
「国宝 鳥獣戯画と愛らしき日本の美術」

会場:福岡市美術館
会期:9月3日(土)~10月16日(日)
※9月27日(火)より後期展示となっていますので、ご注意ください。
下記の特設サイトに出品目録も掲載されています。

「国宝 鳥獣戯画と愛らしき日本の美術」 公式サイトにリンクします。