見る者の心を映す写実絵画たち ~小木曽誠展-写実を超えて-~
現在、佐賀県立美術館では、小木曽誠展-写実(リアル)を超えて-が開催中です。
本展でご紹介しているのは、現代を代表する写実画家の一人、小木曽誠の作品です。
画家として成功することを志し、東京藝術大学入学のために画塾で奮闘していた頃の作品から、多摩美術大学を経て、念願の東京藝術大学に入学してからの作品、その後、佐賀大学文化教育学部美術・工芸課程で教鞭を執りながら手掛けた作品まで、合わせて92点の作品を一挙に見ることができます。それでは、どんな作品があるのか詳しくご紹介しましょう。
静物×人物、自然×人物、あるいは海外の町並みを描いた風景などが、小木曽の作品群の中でよく見られるテーマです。
小木曽の描く静物には、骸骨や水、蝶が頻繁に登場します。小木曽はこれらに生や死のニュアンスを持たせています。大学で絵を学んでいた頃の作品にもすでに見られたモチーフで、小木曽は学生時代に先生から「小木曽くんの絵にはメメントモリを感じるね。」と言われたことがあると語っています。加えてそこに人物が描き入れられることで、見る者は、あるがままの人間の姿とはなにかを考えさせられます。
画像:小木曽誠《静轍なものたち》2005-2006年、笠間日動美術館蔵
また、小木曽はここ佐賀の風景を多く描いており、みなさんに馴染みのある場所も登場しているかもしれません。佐賀の大地が育んだ雄大な自然と、その中に描かれた人物の生み出す独特の雰囲気に、大自然と人間の生命の間のギャップを喚起するような作品が存在する一方、自然と人間の生命が共鳴し合うようなきらめきを感じることができる作品もあります。
画像:小木曽誠《すすきの道》2018年、作家蔵
風景画に描かれる海外の街には、小木曽の西洋への関心が潜んでいます。ある作品では、この街で暮らしていた画家に思いを馳せて。ある作品では、その街の歴史や文化について思いを巡らせながら制作に取り組んだと小木曽は語っています。人物が描かれておらずとも、小木曽は間接的に人間を見つめていることがわかります。
画像:小木曽誠《静轍なものたち》2018年、作家蔵
現実を凌駕するほど写実的に描写をする技術を自在に操り、生み出された作品を見て、みなさんは何を感じるでしょうか。ぜひ会場に足を運び、小木曽の作品を通して、ご自分には何が見えるのか探してみてください。
(文責:学芸課 谷頭 舞姫)