佐賀県立博物館|佐賀県立美術館

REPORT学芸員だより

まだ間に合う!?展覧会「刀と人」ー作る、活かすーの楽しみ方

2023年06月02日 展覧会

 博物館3号展示室では、令和5年5月12日(金)~6月25日(日)まで、テーマ展 「刀と人」ー作る、活かすーを開催しています。

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 本展覧会は、刀剣そのものの美しさについてさる事ながら、
1、刀匠や研師、鞘師、柄巻師といった刀剣を「作る」職人

2、神社などで御神刀を守り継ぐ人や、武道の中で刀を活かす人、刀の輝きを保つために手入れをする刀剣を「活かす人」
といった、刀剣の周りの「人」について2つの視点から御紹介しています。

 会期も残すところあと数日となりましたが、本日は、展覧会に際して開催した3つのイベントの報告と、今から来場してもまだ間に合う?!展覧会の楽しみ方(見どころpoint)について紹介します。

第一弾「刀剣の手入れの話と実演」

 5月14日(日)に開催した「刀剣の手入れの話と実演」では、当館で刀の手入れを担当している研師の今川 泰靖を講師として、実際の刀剣を使用して手入れを実施しました。
 刀身は金属でできているため、放置していると錆が発生します。錆の具合によっては、刀身が破損してしまったり、刀身を研磨することが必要になることもあるでしょう。刀の手入れには、それらの損傷を未然に防ぐ役割があります。

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 会場では刀剣から刀装具類を外し、刀身を軽く拭った後、打粉をあて粉を再度拭い、最後に丁子油を塗布する手入れの作業を公開し、その後、参加者は白鞘の内部構造を観察したり、刀装具の実用的な役割についてお話しを聞きました。

見どころpoint -錆びている刀・刀を包む紙も貴重な資料??-展覧会場接収刀剣.jpg

 展覧会場のうち「県立博物館と接収刀剣」のコーナーでは、戦後GHQによって接収された刀剣類の公開と、それらの活かし方について紹介しています。

 平成11年度に佐賀県立博物館に受け入れられた接収刀剣は、その多くが錆びて本来の輝きを失っていました。その後一部の刀剣は研磨され、美術刀剣としての輝きと姿を取り戻したが、今回御紹介している、研磨をしていない右写真のような錆びた刀剣と油紙は、歴史の中どんな意味を持っているのでしょうか?(続きは会場にて!)

第二弾「兵法タイ捨流による演武と実演」

 5/28(日)には、兵法タイ捨流の方々をお招きし、演武と実際に来場者の方々と共に体験会を実施しました。20230528タイ捨流イベント写真 (1).jpg
 展覧会では、刀剣を「活かす人」として武道にて刀剣を使用する人々を御紹介しています。兵法タイ捨流は、肥後国球磨地方の丸目蔵人佐が創始した剣術流派です。肥前の地に伝わったタイ捨流は、後に佐賀藩の藩校弘道館の指導でも取り入れられ、佐賀藩十代藩主鍋島直正も稽古に励んだといわれています。20230528タイ捨流イベント写真 (5).jpg

 

 

 当日は、兵法タイ捨流第十五代宗家 上原エリ子さんと、兵法タイ捨流龍泉館館長 山本 隆博さん、嬉野の兵法タイ捨流佐賀道場から中村鉄平さんと、竹本清孝さんに演武と御指導をいただきました。また、多くのお客様にもご参加いただき、ありがとうございました。

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見どころpoint -使う活かすと救う「活かす」-20230528タイ捨流イベント写真 (6).jpg

 展覧会場には、タイ捨流に関連する資料として「兵術免許皆伝書」(名護屋城博物館所蔵)を展示しています。この資料には、いくつかの剣術流派について記されていますが、今回はその中からタイ捨流の構えなどに関する部分を公開しています。
 またパンフレットでは、今回演武いただいた兵法タイ捨流の方々が携わられた、被災刀剣の保護と修理に関する取り組みについても御紹介しています。

第三弾「刀匠によるはなし」

 6/4(日)には、現在佐賀県伊万里市で西村直真(なおまさ)鍛刀場を構えられている、西村刀匠をお招きし、刀づくりと、刀鍛冶という職業について御講演いただきました。

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 会場には、刀身を制作する工程について資料を展示していますが、西村刀匠による、刀剣制作における素材や材料、温度、刀身の色合いや反りの変化などの詳細なお話からは、展示物を観るだけでは得られない制作現場の生きた情報を知ることができました。


 当日は、座席が不足するほどのお客様にご来場いただき、ありがとうございました。

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見どころpoint -刀の実用性と美しさ-DSC_1564.JPG

 本展覧会では江戸時代の刀匠として、佐賀藩のお抱え刀鍛冶である肥前忠吉一門とその刀剣を御紹介しています。
 今回は、江戸時代の「作る」人を御紹介するにあたり、初代忠吉をはじめとし数多く居る一門の刀工の中から、初代忠吉と三代忠吉、初代忠吉の婿養子吉信の嫡男である初代正広が制作した刀剣を選び展示しています。江戸時代の試し切り職人である、山田浅右衛門らが刀剣の切れ味を格付けした書物『懐宝剣尺』には、肥前忠吉ら一門の刀工の名前も見ることができます。約200名を超える刀工が掲載される中で、忠吉らの刀剣はどのように評価されたのでしょうか?(続きは会場にて!)DSC_1575.JPG
 また、日本刀は切れ味という実用性とともに美しさも兼ね備えています。会場では刃文や地鉄といった刀身に見える美はもちろん、刀装具にみる美しさと細密な技巧にも御注目ください。

 

(柄頭・柄縁 鍋島報效会所蔵 当館寄託)

 今回ご紹介した見どころpoint以外にも、昭和に佐賀で腕を振るった刀匠と研師による業とそれを受け継ぐ人々の仕事や、展覧会に合わせて行った現代活躍する職人の方々への取材など、御紹介しきれない見どころがたくさんあります。まだご来場でない方や、「続きは会場にて!」が気になる方、6/25(日)までお待ちしております。(松浦)