佐賀県立博物館|佐賀県立美術館

REPORT学芸員だより

千紫万紅の夢-高階秀爾先生の訃報に接し

2024年11月08日 その他

 美術史家で美術評論の第一人者として偉大な足跡を残された、東京大名誉教授、文化勲章受章者の高階秀爾先生が、令和6年10月17日に逝去されました。その生涯はまさしく美とともにあり、私たち、美術館はもちろん美術を愛好するすべての人々にとって、高階先生は美の歴史と未来、その遥かな道程を照らす光のような存在であったと思います。
 高階先生の御業績は、私たちが改めてここに示すまでもないことですが、西洋美術史のみならず日本美術史にも精通され、該博な知識と多方面に及ぶ深い洞察は、日本の近代美術史研究を力強く推進し、さらに豊かな境地へと導いてくれるものでした。
 佐賀県立美術館は開館以来、日本近代洋画の大家岡田三郎助の顕彰を続けていますが、平成5年と同26年、二度の岡田回顧展に際し、高階先生に御講演をいただきました。平成26年の講演会では、演題を「千紫万紅の夢―岡田三郎助の世界」とされ、そのうつくしい語感に岡田の美の世界とともに、先生御自身の美に対するまなざしが感じられるようで、私たち一同、感動を覚えたものでした。
 当館にとって、高階先生と御一緒できた時間はごくわずかにすぎませんでしたが、美の道を見つめる時間を共有できたことに改めて感謝するとともに、その体験を未来へと歩を進める糧としたいと思います。
御冥福を心よりお祈り申し上げます。

(文責 学芸課 野中耕介)

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