ミュージアム・キャラバン隊「昔の道具を知ろう、触ろう」を実施しました!
今年度も、ミュージアム・キャラバン隊「昔の道具を知ろう、触ろう」を実施しました。
前回の「近くで見よう、ホンモノの美術作品」に引き続き、今回は、「昔の道具を知ろう、触ろう」の授業風景をお伝えします。
「昔の道具」として紹介するのは、全21点の資料です。これらをジャンル分けすると、以下の5種類に分けることができます。
1 あかりをつける道具(手燭、遠州行灯、吊りランプ、置きランプ)
2 あたためる道具(火鉢、火箱、ひのし、こて、炭櫃、火箸、湯たんぽ)
3 ご飯を炊く道具(羽釜、飯櫃、飯籠、入れ子、箱膳)
4 洗う道具(たらい桶3種)
5 映す道具(柄鏡、手鏡)
キャラバン隊で紹介しているこれらの資料は、ひとくちに「昔」といっても、使われていた時期は様々です。比較的最近まで使われていたものもあれば、平安時代にはすでに存在していた大昔の道具まで、いろいろな時代の昔の道具をご紹介しているわけです。
そのすべてに共通しているのは「電気がなかった頃」に使用されていた品々という点です。今日では当たり前のように使われ、生活するのに無くてはならない電気。その電気が普及する前の人々は、どのように暮らしていたのでしょうか?子供たちにとっては見たこともない道具を、実際に触ってもらいながら学んでもらいました。
その実例を少しだけご紹介しましょう。
たとえば、この明治~大正期に使われていた「吊りランプ」は、電気が普及する前に石油を燃焼させて周囲を照らす道具として使われていました。江戸時代に使われていたロウソクに比べると、非常に明るく周囲を照らすことができるほか、調整ネジを回すことで、石油に浸した芯の長さを変えることができ、明るさの調整が可能になりました。
このように、前の時代よりも利便性の増したランプですが、電気に比べるとなお不便なところも多かったようです。ランプの熱源を照らす管は「火屋(ほや)」といいます。これは、熱源が風にあたらないよう保護するほか、石油を燃やす際に酸素の流入を助ける役割を果たしていました。しかし、火屋は絶えず熱源に晒されるため、頻繁にススがこびりついてしまいます。
このススを取り除く作業は、子供たちの代表的な家事手伝いだったようです。もちろん、取扱いに十分注意しないとやけどの心配もありました。電球・蛍光灯の普及は、それまでのランプに比べてさらに明るくなっただけでなく、面倒で危険のある手間から人々を解放したともいえるでしょう。
また「あたためる道具」では、昔の人々が「炭」を使って囲炉裏やコタツを温めていたことをご紹介しました。
余談ですが、今年大流行した「鬼滅の刃」の主人公が炭売りだったことも相まって、炭を使った温める道具に子供たちは夢中になっていました!キャラバン隊で紹介する昔の道具は、作品と同じ大正時代に実際に使われていたものも多く、中には「この道具、アニメで見たことがある!」と子供たちが気付くシーンも...
私たち学芸員は、子どもたちにとっては縁遠い昔の道具を身近に感じてもらうため、折々の流行に合わせた例を豊富に用いた紹介を心がけています。電気がないながらも、人々が工夫をこらして道具を変化させていったことが、少しでも子どもたちに理解してもらえれば幸いです。
なお、ミュージアム・キャラバン隊で使用した道具のほとんどは、博物館3階大展示室の民俗展示コーナーで実物を展示しています。暮らしの道具だけでなく、佐賀県と関わり深い農業や有明海漁業道具、玄界灘の捕鯨道具など多彩なジャンルの「昔の道具」を、ボリューム満点にご紹介しています。年始は1月1日(金)から開館していますので、ぜひ足をお運びください。
さて、年が明けて2021年1月からは、「勾玉作り体験」のキャラバン隊がスタートします。実施校の皆様はぜひお楽しみに!そうでない皆様は、ミュージアム・ダイアリーでのご報告をご期待ください!
今年度「昔の道具を知ろう、触ろう」でおじゃましたのは以下の11校です。
●鹿島市立七浦小学校 3年生(10月6日)
●佐賀県立唐津特別支援学校好学舎分校 3年生(10月15日)
●佐賀県立中原特別支援学校中学部 2・3年生(10月29日)
●佐賀市立川上小学校 3年生(11月17日)
●伊万里市立東山代小学校 3年生(11月27日)
●伊万里市立牧島小学校 3年生(11月27日)
●佐賀市立富士小学校 3年生(12月10日)
●鹿島市立馬渡小学校(12月15日)
●佐賀市立中川副小学校 3年生(12月17日)
●武雄市立武夫北中学校 3年生(12月18日)
●武雄市立山内西小学校 3年生(12月18日)
(文責:当館学芸員 阿部大地)